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毎日新聞 2000年6月17日
 さざなみ

目が不自由な人でもパソコンのキーボードを簡単に操作できる日が近く来るかもしれない。

NPO「日本サスティナブル・コミュニティ・センター」事務局長の浅野令子さんと西本卓也・京都工芸繊維大助手らが、その練習ソフトの開発を進めている。
音声が誘導するもので、いったん指先で覚えれば、習熟するのにそう苦労はいらない、という。鍵盤を見なくてもピアノが弾けるのと同じ要領。すでに試作品「打ち込み君」を完成させ、さらに改良を加えている。

ネット社会は、その網目からこぼれた情報弱者も生んでいる。多くの障害者はそういう立場にある。浅野さんは昨年5月から視覚障害者のためのインターネット講座を京都市中京区で始めた。
介助者の付き添いで、パソコンのキーボードをたたく。講座は週1回で計15回。受講生はこれまでに30人以上。ほとんどが中途失明の高齢者。点字を習うより、てっとり早いから、という。
習熟してメールをやりとりしたり、自分のホームページを作る卒業生もいるが、やはりキーボードの操作の習得には個人差が大きい。そこで誰でも簡単に操作手順を覚えられるソフトの必要性を痛感しているという。

インターネットの世界は自宅に居がちな障害者にとってとりわけ魅力的にちがいない。狭い生活空間が一気に地球規模へと広がり、いろいろな知識を得られる。「障害者にとっては世界が広がるだけではなく、新しい職域の開拓にもつながる」と浅野さん。
情報公開で役所や企業のデータ資料、学術論文、会議の議事録などがどんどん公表されるようになった。そうした文字情報を通信システムにのせる作業がなかなか追いつかない。パソコンの技能を習得すれば、障害者もそうした仕事に十二分に参加できる。自分たちでベンチャー企業を起こすのも不可能ではない、という。 「情報化は障害者にもビジネスチャンスをもたらしています」情報弱者の障害者をネット社会の主役に。米国の大学で経営学を修めた浅野さんの宿望だ。

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