2000年3月3日

日本初

産官民協働 情報バリアフリー開発事業

キーボードと音声出力のみを用いた

視覚障害者も音声ガイドでスムーズレッスン

耳で覚えるタイピング 「打ち込み君」 誕生!

電子情報通信学会 福祉情報工学研究会で発表
発表論文「視覚障害者のためのモニターレス・キーボード練習環境」

日本サスティナブル・コミュニティ・センター

事務局長 浅野令子  http://www.sccj.com/ 

京都工芸繊維大学 工芸学部電子情報工学科

西本卓也 (助手)

概要

日本サスティナブル・コミュニティ・センターが運営する、視覚障害者のインターネット教育事業を通じて、 視覚障害者のインターネット普及のためには、その入門編「初めて出会うキーボード」として、PCのブラインド・オペレーションをゲームで楽しみながら学習し、キーボードリテラシーの向上をはかることが重要であることが分かりました。
そこで、京都工芸繊維大学 工芸学部電子情報工学科と音声によるキーボード学習方法の共同研究をおこない、音声によるキーボード練習機「耳で覚えるタイピング 打ち込み君」の試作版を開発しました。その結果、音声だけによるキーボード練習は、大変学習効果があることがわかり、電子情報通信学会福祉情報工学研究会でその詳細の発表をおこないます。
全国の視覚障害者30万人、300万人の障害者、さらに3,000万人の高齢者がインターネットを活用するために、パソコン教育を考えたとき、最初のバリアがキーボード入力練習です。介助者なしで自宅でブラインドキー操作を練習できる環境には大きな社会的ニーズがあります。そこで、製品開発をおこない、無償でソフトウェアを配布するためにスポンサーの募集も始めます。
今後は中古パソコンを活用して安価なキーボード練習機として提供すると同時に、音声によるメールやウェブ利用などのための機器に拡張することを目指して、協働体制を強化していきます。

新聞掲載記事


目次


1. 学会発表

研究成果は、2000年3月9日 第2回 電子情報通信学会 福祉情報工学研究会で発表します。
日時:2000年3月9日(木)
場所:工学院大学(東京)
発表論文「視覚障害者のためのモニターレス・キーボード練習環境」

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2.音声ガイドでスムーズレッスン
―――「耳で覚えるタイピング 打ち込み君」―――

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3.開発スタッフ  

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4.背景と目的

視覚障害者が音声でインターネットを活用することにより、従来は困難であった即時性のある情報の入手や社会参加が可能となります。しかし、視覚障害者にとって、文字入力はパソコンを使う上での大きなハードルとなっています。それにも関わらず現在、視覚障害者を対象とした日本語キーボード練習用ソフトウェアは存在していません。そこで、起動から終了まで画面表示やウィンドウ操作を全く必要としないキーボード練習環境を実現し、これにより、パソコンを初めて学ぼうとする視覚障害者が、介助者なしでブラインドキー操作の練習をできるようにすることが目的です。

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5.視覚障害者のためのインターネット教室
高齢者や障害者でもできる効果的なブラインドキー操作が情報リテラシーをアップ

民間非営利団体(NPO)の日本サスティナブル・コミュニティ・センター(SCCJ)では京都市、京都ライトハウスなどとのパートナーシップによって視覚障害者のためのインターネット講座(90分x15回)を1999年5月より開催しています。京都で開催しているにも関わらず、大阪、神戸、和歌山、奈良、滋賀など他府県からも積極的な参加があり、受講生は1999年度末で約32人になります。また、SCCJではこの講座の講師の養成も並行して行なっています。
この講座のカリキュラムは、インターネットを教えるのが目的であるにも関わらず受講者にブラインドキー操作を覚えてもらう為に、15回のコースのうちの半分くらいを使っています。ですので、自宅に持ち帰ってブラインドキー操作の練習ができるような環境があれば、本講座における7〜8回分のキーボード練習を5回程度減らすことができ、その時間をインターネット講座の充実に回すことが可能となります。

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6.視覚障害者にとってのパソコン使用の意義
成人の中途失明者には点字よりパソコン
視覚障害者がパソコンを使えるようになることの社会的意義は大きく、点字や朗読テープといったメディアからの情報収集に頼っていた視覚障害者が、電子メール、インターネットなどを使うことで、即時性のある情報の送受信やコミュニケーションの手段を得ることができるようになります。例えば新聞を読むという行為に関しても、人に読んでもらう必要がありますが、テキスト化された新聞記事情報がインターネットから入手できるようになり、好きな時に音声リーダーを使って、ニュースを知ることが可能になります。また、封筒に宛名を書いて投函しなくても、電子メールを用いて他人に手紙を送ることができます。このようにパソコンの利用によって視覚障害者の情報送受信の利便性は大幅に増します。
厚生省の調査(平成8年身体障害者実態調査及び身体障害児実態調査の概要について)によると、平成8年度における視覚障害者の推計値は305,000人ですが、そのうちパソコンが使える人はわずか1,000人。また点字が使える人はすべての視覚障害者の10%未満というのが現状です。生まれたときから視覚がない人は点字を幼い頃学べますが、成人中途失明者には、点字の習得が困難です。従って、視覚障害者のための情報ディスプレイ手段として即時性のあるパソコンなどを活用した合成音声の活用がより有効です。

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7.Linux を使うことの意義
視覚障害者にとって真に使いやすいインターネット環境は従来の GUI の延長として存在するのではなく、AUI(Auditory User Interface) のような新しい発想のインタフェースである、と考えています。このような観点から、OS の基本機能と GUI 管理機能が分離されていない Windows などの OS よりも、Linux の方が、より少ないハードウェア資源で本システムを実現できます。現在 Linux 環境で利用可能なアプリケーションは限られています。しかし、メールやウェブ閲覧といった基本的なインターネット機能に限定すれば、これらの音声化・日本語化は可能です。将来的にはこのような環境と高い親和性を実現することを目指します。
そして現状においては、95Reader などの Windows 用の音声化システムを使いこなせるようになるための導入として、タイピング練習専用機として本システムが使用できればよいと考えています。このような考えに基づいて我々は、Linux 上で動作するタイピング練習環境を構築することとしました。
ディスプレイ画面を持たず、スピーカーとキーボードのみを持ち、視覚障害者が電源を入れて音声ガイドに従って練習を行ない、終了したらただ電源を切ればよい、そのような形態の自宅学習を実現することが目標です。
プラットフォームとして Linux を選択したことにはもう一つ意義があります。
Linux システムを非GUI環境で利用すれば、Windows などの最新OSでは性能的に非力で使えなくなったマシンでも比較的快適に使用することができます。そこで、中古パソコンを用いたリデュース(省資源化、長寿命化、リペアによる廃棄物の発生抑制)事業としてこの練習機を制作すれば、システムを安価に実現できるだろう、という期待があります。
    通産省環境立地局環境政策課・リサイクル推進課「循環型経済システムの構築に向けて」 
パソコンの年間出荷台数が約1,000万台という時代を迎え、今後は中古パソコンのリデュースが重要になります。このような観点からも、オープンソースでカスタマイズしやすいLinux ベースのシステムが有利ではないかと考えられます。

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8.スポンサー募集
製品開発をおこない、無償でソフトウェアを配布(目標100万本)するためにスポンサーを募集します。
製品中にスポンサーのサウンド・ロゴなどを組み込みます。障害者、健常者の垣根をなくし、共に情報化時代を楽しい社会にしましょう!

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9.プレスリリース問い合わせ先
日本サスティナブル・コミュニティ・センター
asano@sccj.com
または、電話075-257-3777、ファックス075-257-3778

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