■SCCJトップページへ戻る■コミュニティフォーラムへ戻る■みあこネットへ戻る 

開催レポート コミュニティ・フォーラム2002

『公衆無線インターネットとコミュニティ・ビジネスの可能性を探る』


セッション1

講演1『21世紀には何が求められているのか〜無線インターネットへの注目』
公文俊平氏(CANフォーラム会長 国際大学グローバル・コミュニケーションセンター所長)

 

今日は産業社会であり続けており、50年前から第三次産業革命というべき変化が起こっている。と同時に、情報化の波も起こっている。そこでどんなビジネスモデルができるか、これまでの産業に変わる新しい主導産業とは何かは、大きな問題である。
近代化は3つの局面を通って進んできた。国家が出てきて社会を動かし、産業化の波が起こった。そして、第三次産業革命では生産や消費を含めたコミュニティの生活の中に、機械化・商品化の変化が入ってきた。
 アメリカでは、これからの産業は映画や出版物といったコンテンツ産業と言われている。しかし、情報革命の中で人々の知的能力が増進すれば、コンテンツは自分たちで作っていける。人々の知的活動、様々なグループ活動、コミュニティ活動を支援していく新しい種類のサービスが次の産業ではないかと私は思う。21世紀には人々のコミュニケーションそのものが、グループ間で多対多の、密度の濃いコミュニケーションに変わるだろう。 
今後は情報産業革命、情報社会革命により、地方分権化とグローバル化を実現していかねばならない。情報通信のインフラ、ネットワーク、コミュニティエリアネットワーク(CAN)を全国的に作っていく必要があろう。その2つを柱に、地方の時代は本格的に始まるのではないか。

講演2 『各地の情報化の取り組みから見えてくる新しい社会』
辻正次氏(大阪大学大学院国際公共政策研究科教授 KANSAI@CANフォーラム主査)

 情報化の先進的な取り組みを調査研究し、その成果をまとめ上げてきた。医療、教育、地域の産業振興に力を入れている各地の情報化事例をご紹介し、地域を活性化させるために必要なものは何かを考えてみたい。
 札幌市では、冬場に雪が降っても道路が凍結しないようにするシステムを作っている。白鷹町では、インターネットを通じて都心部の仕事を受け入れられる滞在型のコテージがある。そこでは日本語とモンゴル語の翻訳ビジネスも行なわれている。また、最上町はISDNを用いた在宅医療を行なっている。兵庫県の加古川市では病院の投薬、検査情報をICカードに入れている。奄美大島の瀬戸内町、岡崎市では学校教育における情報化が行なわれている。
ところで、この推進化事業で重要なのは人的要因、つまり、その地域のリーダーシップを持っている人の熱意である。地域にあるそれぞれの団体が、「協調」と「競争」の両面を持ち、地域活性化をしていく必要があると、私は感じている。

講演3 『みあこネット 京都における無線インターネットを活用したコミュニティ活性化モデル−ニーズやシーズのマッチング』
岡部寿男氏(京都大学学術情報メディアセンターネットワーク研究部門教授)

 「公衆無線インターネット事業に取り組みたい」とSCCJより聞いた頃、私はモバイルインターネットの研究をしていた。そして、昨年度の通信・放送機構の補助金をきっかけに、京都で100局程度の基地局を設置し、端末による認証実験が始まった。それがみあこネットの始まりである。(財)京都市高度技術研究所を巻き込み、アクセスポイントオーナーを募集。4月から基地局の設置を始めた。今、JR京都駅ビル、ねねの道、高台寺、新風館、鴨川等にアクセスポイントを設置している。利用者は24時間無料である。みあこネットはもう1年、延長されるので、さらに新しい技術を考え、利用者層を拡大し、コストを下げていきたい。
 みあこネットによる「地域の情報化」で大事なのは、地域で技術をもった人材育成ができることである。また、いろんな人とのつながりもできる。この取り組みにより、学生、観光、ハイテクの街という京都に、多くの人たちをよびこみたい。

セッション2

『地域情報化に取り組んでいる各地の事例発表』
コーディネータ 國領二郎氏(慶応義塾大学大学院経営管理研究所教授)

事例発表1.京都市伏見区 竜馬通り商店街振興組合 伊達ゼミナール
伊達浩憲氏(龍谷大学経済学部 助教授)とゼミ生
 

 私たちは深草伏見の竜馬通り商店街の活性化にゼミナールで取り組んできた。
 竜馬通り商店街は28店舗、アーケードもなく、こじんまりしたところである。商店街活性化として、私たちは商店主向けIT講習会等を行ない、これを機に、みあこネットの基地局オーナーに応募した。インターネットが自由に使える公共空間としての商店街を目指し、既存資源の有効活用、低コスト化を重視した。商店主、大学生、NPOの協働により、ネットワークを構築した。また、回線の共同利用でコストを押さえた。みあこネットの技術的問題点として、ノートパソコンとLANカードを持っている人に限定されてしまうことと、ドライバーのインストールが面倒なことがある。課題として、地域住民の巻き込みをする必要性があり、それにはコミュニティ情報を発信し続ける担い手がいるだろう。

事例発表2.京都府舞鶴市 舞鶴IT推進協議会
道譯健之氏(有限会社アイエス 代表取締役)
 

 2年前に発足した舞鶴IT推進協議会は、9団体の企業が集まっている。
 舞鶴商店街における無線インターネットは2箇所つけて、商店街全部を網羅できるようになった。ただ、設定が大変なために、実際の利用者は少ない。しかし、無線インターネットにより、各商店街が一つとなったホームページができると、インターネットの総合チラシとなり、新しい商品や特売情報を出すことができる。 
 観光地である「舞鶴とれとれセンター」内にもアクセスポイントがある。そこは舞鶴IT推進協議会関係者がとても便利に使っている。情報化による地域活性化はそこにいる人が求めているニーズに合わせた形となるのが、一番よいのではないかと思う。
 

事例発表3.石川県金沢市 片町商店街振興組合・金沢bizcafe・鶴来町商店街 
諸江 洋氏(片町商店街振興組合 専務理事)
 

〈人と人とを結びつけるコミュニケーションネットワーク〉
 片町商店街は来店者数減少に歯止めをかけようと、大型ディスプレイを設置し、街への楽しみをITにより、付加していった。片町商店街の中心にある金沢bizcafeはカフェとビジネススペースを併せもち、多くの人が集まるプラットフォームの役割も持つ。異業種交流会なども盛んに行なわれている。そこで催している写真展など、光ケーブルによって商店街のディスプレイにライブ中継している。
 石川県鶴来町の商店街でもパソコンなどによるネット注文や宅配システムも行なっている。高齢者を対象としたこのシステムは、地域福祉への貢献の意味も持ちあわせている。

事例4.兵庫県 播磨地方 
和崎 宏氏(インフォミーム株式会社 取締役社長)
 

パソコン通信で町おこしができるのではないかと、1987年に播磨タウンネットという公共の情報局をつくったのが始まりである。96年7月、民間プロバイダを作ろうと、インフォミーム株式会社を設立。人の輪を作ろうと集まって来た人たちで議論を重ね、「はりまマルチメディアスクール」を行なった。
 その後、地域情報を世界に発信していこうと、「はりまスマートスクールプロジェクト」を立ち上げた。自立、分散、協調、競争する地域社会を作っていこうという目的である。「自発した市民」がキーポイントとなっている。集まったボランティアたちと学校とが共同し、子どもたちのために心を一つにした。そして、それは全国にも広がった。社会貢献のための協働の場を提供することで、がんばった人たちがつながり、これが循環となっていった。
 2001年からはエコマネーやSOHO支援組織を作ったりしている。
 これから大切なことは、地域が力を合わせての教育の情報化である。地域の情報化にはコミュニティウェアが必要であり、どこでも情報が入るようにしていきたいと思っている。

○(國領)モデムの設置が負担というより、コミュニティ作りが課題である。一番大きな課題はコーディネータをどう育て、盛り立てていけるのかである。案外、まちづくりも改造していかないと、無線の快適さは生きてこないだろう。このようにまとまるのではないか。
 今日の4人の事例は非常に勇気づけられる。こういう横のつながりを作り、元気をギブアンドテイクしながら、前に進んでいってもらいたいと思う。

文責:SCCJ事務局